失踪事件を扱った書籍




○ 本項では、失踪事件を扱っている書籍の個人的な感想を掲載している。
○ 信頼性を3段階で評価してある(★〜★★★)。あくまで「信頼性」であって、面白さやお薦めの度合いを示すものではない。★が多ければ実証的、少なければ与太話満載といった具合に理解してほしい。


1 佐藤有文

 妖怪・怪物を紹介する子供向けの本を多数執筆したことで知られる作家。内容はいい加減で、勝手な創作を多数含んでいるが、その著作のインパクトは絶大。水木しげるに次いで妖怪の普及に貢献した人ではなかろうか。人が忽然と消えてしまう現象にも強い興味を示し、「四次元物」というべき本を多数執筆している。

『四次元博物館 ミステリーゾーンを発見した』 (KKベストセラーズ) 1976.6.5初版発行

 報知新聞に連載していた「四次元博物館」に加筆、再構成したもの。「四次元」などと名乗っているが、幽霊からUFO、予言といった不思議な現象を手当たり次第寄せ集めた内容となっており、統一感は皆無。だが、それが却っておもちゃ箱的な面白さとなっている。
 刊行が古いせいもあろうが、収録されている話の多くは既に論破されたものが多い。例えば、マヤ文明の遺跡から発見された「宇宙船に乗る古代マヤ人のレリーフ」(横に見るからそう見えるだけで、実際は縦に見ると証明されている)の話がそのまま疑いも差し挟まれず掲載されている。

【収録されている失踪事件】
 デイビッド・ラング失踪事件ジェラルド・ビダル事件、スペイン兵士テレポート事件、藤代バイパス車両失踪事件、ノーフォーク連隊集団失踪事件、中国兵士集団失踪事件、ネフド砂漠におけるイギリス空軍兵士失踪事件

信頼性:★☆☆(2008.5.11記)

『キミは信じられるか 四次元ミステリー』 (KKベストセラーズ) 1981.8.5初版発行 

 同氏の著作の中では最もくだらない部類に入る本。
 いかにくだらないか、「地底人デロ」の項から実例を挙げよう。エレベーターに入った女性が次々に姿を消す。それは地底人デロによるもので、高度な文明を持ちながらセックスにしか興味の無くなった彼らは、特殊な装置を用いてエレベーターから女性を誘拐、「デロ、デロ、デーロ」(原文ママ)と奇声を上げながら性の饗宴に耽る……というお話。アホか。
 ミイラ船「良栄丸」といった定番の怪奇話も収録されており、全部が全部「デロ、デロ、デーロ」というノリなわけではない。念のため。

【収録されている失踪事件】
 フィンランドの「人食い森」、バミューダ・トライアングル

信頼性:★☆☆(2008.5.11記)

『地球の中の 怪談ブラックホール』 (KKベストセラーズ) 1984.6.15初版発行

 昭和52年に発行された同名(?)の書籍の文庫版。
 「ブラックホール」などと題名にあるので、きっと失踪事件も多数収録されているだろうと思いきや、その手の話は地中海を飛んでいた飛行機が瞬間移動したという一件が紹介されている程度。他は怪談、怪獣、実在した殺人鬼の話などがごたまぜに収録されているだけである。

【収録されている失踪事件】
 地中海上空航空機瞬間移動事件

信頼性:★☆☆(2008.5.11記)

『謎の四次元ミステリー 地球の中の不思議ゾーン』 (青春出版社) 1990.8.5初版発行

 佐藤有文が四次元現象にかける思いのたけを全て注いだ一冊。例によって内容の信頼性は低いが、他の類書と異なり、この本は最初から最後まで四次元失踪事件一色。手に入れたときは胸が躍ったものである。
 この本の最大の見所は「四次元学入門」と題された項目で、何の前触れもなく、あたかも自明の理であるかのように「四次元怪獣」なる怪物が登場する。明らかに荒唐無稽なのは言うまでもないのだが、その筆致があまりに自信に満ち溢れており、なおかつメビウスの輪やクラインの壺を持ち出した一見科学的な説明(出鱈目だが、なかなか凝っている)が加えられているので、読者はその迫力に圧されること間違いない。さらに後半には「四次元パトロール」までもが登場、隊員が守るべき掟が列挙されている。佐藤先生、やりたい放題である。
 実在した怪事件を取り上げたという触れ込みの本で、ここまで著者オリジナルの設定(妄想)を盛り込んだ本を、私は他に知らない。四次元、失踪、神隠しという言葉に興味を抱く人は、是非一度手にとってみてほしい。

【収録されている失踪事件】
 数が多すぎるので省略

信頼性:★☆☆(2008.5.11記)

2 桐生操

 殺人や拷問といった、人間の暗部にまつわる本を多数書いている女性作家。女性2人の共用ペンネームである。コンビニや駅のキオスクでも本が売られてたりするので、手に取ったことのある人は相当多いだろう。怪現象に関する著作も多く、大変簡潔で読みやすい内容が特徴。
 ただ、この人の書くものは俗説や通説をさらりとなぞるだけのものばかりで、著者のオリジナリティがほとんど見られない。中には無名ライター集団の手によるものと思われる本と同工異曲なものもある。もっとも、私が読んだことのある彼女の本がたまたま薄い内容であった可能性もあるが……。
 彼女の本には必ず巻末に参考書籍一覧が掲載されている。それ自体は大変良い心がけだと思うが、参考書籍の中身をそのまま流用している疑いがないでもない。
 私は彼女のある本(図書館で借りたため名称は失念)で、偽エチオピア皇帝に扮装して英海軍をコケにしたヴェア・コールなる人物の存在を知った。その後時を経て、種村季弘の『詐欺師の楽園』(岩波現代文庫。原著は1975年刊)を手にする。「贋エチオピア皇帝の訪れ」という項でヴェア・コールが紹介されていたが、その内容は私の記憶の中のそれと瓜二つであった。

『世界の幽霊怪奇 本当にあった不気味な話』 (青春出版社) 1992.8.5初版発行

 その名のとおり、世界中の怪談・奇談を集めた一冊。
 聞いたことのないような外国の怪談を数多く収めており、そちらの分野に興味がある人にとっては興味深いかもしれない。私は幽霊話には関心が薄いため、軽く流し読みした程度。
 同書に収録されている、アフリカはアンゴラ帝国のジンガ女王の話が印象に残っている。人肉が好物で、無礼を働いた農民600名を集め、全員を粉ひき機に突き落として殺害するような暴君だというのだが、実話なのだろうか? 600人が黙って粉ひき機で挽かれるという光景が今一つ思い浮かばないのだが……。

【収録されている失踪事件】
 ホイータ号失踪事件、バミューダ・トライアングルデイビッド・ラング失踪事件ジェラルド・ビダル事件

信頼性:★☆☆(2008.5.11記)

『世界史 迷宮のミステリー2』 (ワニ文庫) 1993.5.5初版発行

 世界史上の謎が残る事件をまとめたもの。「2」とあるので前作もあるはずだが、未読。シャロン・テート虐殺事件や人民寺院事件など、桐生操らしく血生臭い事件が多い。
 間違いなく実際にあった事件を取り上げているので、そう突飛な内容は書かれていない。通説から週刊誌的な陰謀論まで幅広に紹介し、どう考えるかは読者におまかせといったスタンスに貫かれている。

【収録されている失踪事件】
 アメリア・イヤハート失踪事件

信頼性:★★☆(2008.5.11記)

『世界史 戦慄の怪奇ミステリー』 (にちぶん文庫) 1993.7.25初版発行

 世界中の怪談・奇談を幅広く紹介するという、桐生操お得意の本。
 結構マイナーな失踪事件も取り上げている。エル・ドラドを求めてアマゾンのジャングルに消えたフォーセット大佐の話はこの本で初めて知った。さっきから私は桐生操について、結構辛辣な内容を書いているが、何だかんだ言ってこういう埋もれがちな事件を本にして世に出してくれる作家はありがたいものだと思う。

【収録されている失踪事件】
 フォーセット大佐失踪事件、アイリーン・モア灯台事件、マイケル・ロックフェラー失踪事件、デイビッド・ラング失踪事件

信頼性:★☆☆(2008.5.11記)

『ヨーロッパ・歴史と謎の名所物語』 (ワニ文庫) 1996.2.5初版発行

 ヨーロッパ各地の名所を、その地のエピソードと共に紹介している本。
 ローマの「骸骨寺」や、かつてギロチン処刑が行われていたフランス・コンコルド広場を取り上げているあたりが桐生操らしいが、水で有名なエビアンや『ハムレット』の舞台となったクローンボルク城など、怪奇とは無縁の場所も多数紹介されている。一風変わった旅行ガイド本と見ると面白い。

【収録されている失踪事件】
 ハーメルンの笛吹き男(ドイツ・ブンゲローゼ通り)

信頼性:★★☆(2008.5.11記)

3 バミューダ・トライアングル関係

 バミューダ・トライアングルは失踪多発箇所として非常に有名であり、それゆえ関連書籍も膨大な数に上る。その中から筆者が有するものを紹介したい。

チャールズ・バーリッツ著、南山宏訳 『謎のバミューダ海域 完全版』 (徳間文庫) 1997.4.15初版発行

 全世界20か国で翻訳、500万部以上を売り上げた“The Bermuda Triangle”(1974)の翻訳。1975年に一度翻訳されているが(訳者は同じ南山宏)、本書はその完訳版である。バミューダの謎を語る上では外せない一冊。
 そのものずばりの書名と、バミューダの伝説を形作ったという触れ込みから、一冊全てバミューダ・トライアングルで埋め尽くされていると思いきや、およそ半分近いページがUFOやオーパーツ、アトランティスの伝説といったおなじみの超常現象に費やされている。トライアングルの謎を解く鍵が、これら科学で解明されていない現象に隠されているという趣旨なのだろうが、まとまりを欠いている感は否めない。
 明らかに常識外れで非科学的な現象を述べておきながら、批判的な態度が希薄である点が物足りないものの、全体のトーンとしては控えめであり、現象の真偽については読者に委ねるという態度で書かれている。とはいえ明らかな事実誤認や捏造が含まれているので、信頼に足る書籍とは言い難い。その辺りの批判については本サイトのバミューダ・トライアングルの項で触れているので参照されたい。

信頼性:★☆☆(2008.6.22記)

マーチン・エボン編 青木榮一訳 『バミューダ海域はブラック・ホールか』 (二見書房) 1975.8.30初版発行

 バミューダ・トライアングルにまつわる様々な言説を一つにまとめた本。肯定派・否定派双方の言説を幅広く取り入れており、中立的な本を作ろうとする姿勢が好ましい。主な執筆者は、編者のマーティン・エボン、「バミューダ・トライアングル」の語の生みの親ヴィンセント・ガディスなど。ローレンツ・クシュもマーティン・エボンによるインタビューの受け手として登場する。
 あたかも珍説を並びたてているかのような書名であるが、これは翻訳が悪い。原題は“The Riddle Of The Barmuda Triangle”(バミューダ・トライアングルの謎)で、ブラックホールとは何の関係もない。ブラックホール云々は、寄稿者の一人が、ごく一部の箇所で述べているに過ぎないのである。売上目的で珍奇な邦題をつけたのであろうが、編者のマーチン・エボンはバミューダ否定論者。こういった原書の意図を著しく損なうやり方には大いに異議を唱えておきたい。
 エドワード・E・コステーンという人による、アヴェンジャー機失踪事件の謎解きが本書の白眉である。バミューダの「謎」を喩えた次のような説明が殊のほか印象的だ。氏は3×3の正方形に並べられた点を示し、一筆書きで、しかも4本だけの直線で点を結んで見せよという。答えは大きな直角三角形に、90度の角から斜辺に向かって伸びる直線を描いた、傘のような形になる。
 四角形の形に囚われていてはこのクイズは解けない。バミューダの謎もそれと同じで、表面的な謎に囚われ、限定的な選択肢の中で事象を説明しようとするから、UFOや四次元といった突飛な説明が生じてくるのだと氏は説明するのである。

【収録されている他の失踪事件】
 デイビッド・ラング失踪事件イヌイット村人失踪事件メアリー・セレスト号事件

信頼性:★★★(2008.6.22記)

ローレンツ・D・クシュ著 福島正実訳 『魔の三角海域 その伝説の謎を解く』 (角川文庫) 1975.9.30初版発行

 原題“The Barmuda Triangle Mystery-Solved”(1975)。アリゾナ州立大学の図書館員であった著者が、度々寄せられるバミューダ・トライアングル関係の問い合わせに興味を抱き、徹底調査したうえで完成させた一冊。
 内容についてはバミューダ・トライアングルの項で詳しく述べたので割愛する。若干、論理に不安を感じる箇所があるものの、バミューダ・トライアングルの謎解き本としては決定的なものであり、今なおその価値は減じていない。日本語版が絶版になっているのが惜しまれる。
 この本にはもう一つ素晴らしい点がある。訳者による巻末の後書きである。日本にSFを定着させた功労者である訳者は、超自然的な解釈が安易に「流行」し、センセーショナリズムに走るのを厳しく批判、次のように問いかける。
 なぜ彼らは、仮説を仮説として提示し、フィクションをフィクションとして楽しむことに満足しないのだろうか? なぜ彼らは、仮説を、あるいはフィクションをすら、現実と直結しようと躍起になるのだろうか。仮説から、検証を飛び越して、いっきに一般法則へと短絡したがるのだろうか?
 何故なのだろうか? この問いはスピリチュアルとやらが流行る今日の我々にも投げかけられている。

信頼性:★★★(2008.6.22記)

チャールズ・バーリッツ著 南山宏訳 『大消滅 その後のバミューダ海域』 (徳間書店) 1977.6.10初版発行

 原題“Without Trace”(1977)。チャールズ・バーリッツが前著から3年後、その後の研究や反論を受けて執筆した作品。
 客観性が低下し、妄想(願望)の度合いが強まっている。断定的な文章こそ巧妙に避けているものの、バーリッツがいわゆる古代の超文明やUFOといったものを信じたがっているのは明らかだ。バミューダ・トライアングルの謎を扱いながらあちこちに話を広げてしまっているがために、前著同様、本書もまとまりを欠いた内容となってしまっている。
 あまり面白い本ではないが、巻末に掲載されている143件もの「主要な消滅リスト」は、これからバミューダ・トライアングルの謎解きに本格的に取り組もうという人にとっては役立つだろう。ただし、クシュの批判を受けたにも関わらず、相変わらず掲載されている事件もあるので注意が必要である。

【収録されている他の失踪事件】
 ノーフォーク連隊集団失踪事件

信頼性:★☆☆(2008.6.22記)

リチャード・ワイナー著、青木榮一訳 『魔のバミューダ海域』 (二見書房) 1980.8.20初版発行

 原題“The Devil's Triangle”(1974)。バーリッツの“The Bermuda Triangle”とほぼ同時期に刊行されている。
 淡々とバミューダ・トライアングル内の失踪事件を紹介するという内容。決して超常現象的な解釈に走らず、紹介する事件の多くに事故や遭難といった現実的な結論を下しており、「悪魔の三角形」といういかにも扇情的なタイトルとは裏腹に、冷静な態度が保たれている。
 最初から最後まで遭難事故の記録で占められており、刺激的な内容を求める人々にとっては些か退屈な本かもしれない。広く人気を得るためにはバーリッツの本のように、無節操に盛りだくさんの要素を詰め込んだ方が有利なのだろう。そういった意味では、500万部を売り上げたバーリッツは上手かった。

【収録されている他の失踪事件】
 ドナルド・クロウハースト失踪事件

信頼性:★★☆(2008.6.22記)

4 その他



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